コメディアン宣言
千代次
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ーとある場末の劇場の幕が開く。杉本が立っていてコメディアンの話が始まる。

今日、世界は死んだ。もしかしたら昨日かもしれない。

ーキャー!カッコいい~!ミーハーな私は彼に向って色とりどりの紙テープ投げる。世界は壊れてるんじゃない。「死んだ」という感覚に私はビン!

考えてみれば人の一生はコメディ仕立てだ。

ーヒェ~!そうじゃない一生もあるだろうが私はそのものズバリやん!私は私のヒロイン物語を紡ごうと夢見たけどサ。

時折社会を冷ややかな眼でみたり距離をおいてみたりする人間がいる。そういう人間は評論家かコメディアンになった。評論家はオプティミストだ。社会はまだ変えられると思っている。コメディアンはペシミスト。どうしようもない手の付けようもないこの世界を笑いとばすしかないと思っている。私もその一人なのだがコメディアンとはある種の諦感に達した人たちだ。この人種は未来に希望を持たず全く非生産的だ。成熟社会が頂点に達するとコメディアン希望者が急増してしまった。

ーあぁ、胸に手をあてて私がそうです!

世界は失業コメディアンに満ちあふれ、大笑いのうちに幕を閉じた。

ーキャー!キャー!私はまた五色のテープ投げる。泣きながら。



(杉本博司「ロスト・ヒューマン」展より。)